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2019/10/3

春の桜ダイと秋のタチウオも捨て難い

第四章 広島人はなぜ、地元愛にこだわりすぎるのか
瀬戸内海・「魚」の力 高級魚よりも新鮮でおいしい

岩中祥史「広島の力」(青志社)より

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 春は春で、「桜ダイ」という名物がある。マダイのことだが、春の広島で獲れるタイは体が桜色をしており、しかも桜の咲く時期がいちばんおいしいということでこう呼ばれている。

 もともと広島湾の周辺は、多くの山や島に囲まれ、そこから流れ出た栄養分が川を伝って、海へと流れ出てくる。安芸灘、広島湾、備後灘は平均水深が25メートル前後と浅いため、タイの餌となるプランクトンや小エビ、カニ等が豊富に育つ。また、来島(くるしま)海峡など、島々の間では、潮の干満の差により速い流れが生まれるから、そこを泳ぎ回る広島のタイは身がたいそう引き締まっている。

 3月に入り瀬戸内海に暖流が流入し始めると海水温が上がり、広島周辺の海で越冬していたタイは産卵のため、内海に入り込んでくる。産卵を控えているため、栄養分がたっぷり蓄えられているのだ。

 広島県では昔から、お祝いごとがあるときは「めでタイ」の語呂合わせで、タイを食べる習慣がある。その際、「細く長く続くように」という願いを込めて、「タイ素麺(そうめん)」にすることも少なくない。

 そのほかにも、汁物、酢の物、酒蒸し、バラ寿司、炊き込みご飯、佃煮、ワイン蒸しなど、さまざまな料理にして食べることができる。

 春は、タイ以外にも、メバル(刺身、塩焼き、煮付け、から揚げ、味噌汁など)、コウイカ、文字どおり「春の魚」と書くサワラ(鰆)がおいしい。

 サワラはサバ科の魚で、成長に伴って呼び名が変わる出世魚。広島では、小さいものをサゴシ、大きいものをサワラと呼ぶ。

 歯がカミソリのように鋭いのが特徴で、大きなものになると体長120センチほどにまで成長する。4〜6月にかけての時期はとくに脂が乗っており、刺身はもちろん、塩焼きにしても味噌焼きにしても、またバラ寿司にしてもおいしく食べられる。

 秋のタチウオ(太刀魚)も捨て難い。

 タチウオは、その名のとおり身が長く、しかも銀色に輝いている。名前の由来には二説あり、一つは姿かたちが刀に似ているため、もう一つは垂直に立って泳ぐからというもの。成長するにつれ魚食性が強くなるため、ときには共食いをすることもあるという。広島周辺の漁場は、これまで述べてきたようにいい魚が多いから、それを食べて成長するタチウオも甘みがあり脂がよく乗っているのだ。

 1979年ごろから呉の豊島(とよしま)で始まったという「一本釣り」漁法のおかげで、銀白色の表皮にはまったく傷がなく、ピカピカ光っているのが特徴。

 秋が旬の魚はほかにも、サバ、キュウセン(ギザミ・ベラ)、カワハギ、コノシロなどがある。カワハギの肝は広島でも珍重されている。

 ただ、ここまで書いてきたように、「魚の力」といっても、つまるところは「水の力・川の力」であり「土の力」であり、さらに言うなら「山の力」なのである。瀬戸内海でも、広島県の南側一帯で なぜいい魚が獲れるのかといえば、中国山地の土壌に含まれるミネラルや、木々のもとにたまった落ち葉や腐葉土が川、あるいは地下水の流れに乗って下流まで運ばれ、それが海に流れ込んでいくと、植物性プランクトンがふんだんに育つからである。

 自然界の連環といってしまえば話は簡単だが、東隣の岡山県でも、西隣の山口県でも、広島県ほどの量は獲れない。2014年の漁業生産量の統計を見ると、広島県が13万8224トン、岡山県は2万8千トン弱、山口県は3万トン余にとどまっている。広島県の向かい側・愛媛県の13万7581トンさえ上回っているのだ。瀬戸内海を取り囲む県の中で、広島県ほど水産物に恵まれているところはないと言える。

 北海道、青森、岩手、宮城、茨城(いばらき)、千葉、静岡、三重、長崎や鹿児島のように大きな外洋に面しているわけでもないのに、これだけの量が獲れるのは、よほど海(水)の質がいいからである。私たちの想像を絶するポテンシャルを秘めた「瀬戸内海」もまた、「広島の力」の土台にあることを忘れてはなるまい。


岩中祥史(いわなか よしふみ)
 1950年11月26日生まれ。愛知県立明和高校から東京大学文学部に進み、卒業後は出版社に勤務。1984年より出版プロデユーサーとして活動するとともに執筆活動も。地域の風土と人々の気質との関係をテーマに、『名古屋学』『博多学』『札幌学』『鹿児島学』『新 不思議の国の信州人』『新 出身県でわかる人の性格』『名古屋の品格』『城下町の人間学』など著書多数。2011年の上梓した『広島学』はご当地広島の人たちをも驚かせる内容で、ベストセラーになった。


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