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2019/5/30

広島大学の若手研究者に聞く 

ブラックホール撮影チームの一員
膨大なデータから画像を復元

専門は可視光天文学。ジェットの観測を研究
広島大宇宙科学センター特任助教 笹田真人さん

■世界初のブラックホールの輪郭を撮影

 ブラックホールは大変強い重力を持つ天体で、今回は地球から約5500万光年離れたM87銀河の中心にあるブラックホールを観測しました。観測チームには、世界から200人以上の研究者が加わり、僕が担ったのは簡単に言うと、膨大なデータから画像を復元するソフトウエアの開発。観測には、複数の電波望遠鏡をつないで、疑似的に地球規模の望遠鏡をつくり、それぞれの観測データを合成する電波干渉計技術が用いられました。電波干渉計観測では、カメラのように実画像にするのが難しいため、データを読み解きながら画像を復元しました。

■画像が得られた瞬間

 チームとしては2000年代初頭からブラックホールのシミュレーションをしており、今回、観測されたよ うなリングは見えるだろうと予想していましたが、実は予想通りの画像だったことにびっくりしました。予想外のことが起きるのが宇宙の研究で、予想外のことは起きてしかりだと思っていましたから。


▲撮影に成功したブラックホールの輪郭


▲広島大宇宙科学センターの1・5mかなた望遠鏡
■撮影成功の意義

 100年以上前にアインシュタインが提唱した物質の周りの重力と時空のゆがみを関係づける一般相対性理論が正しかったことを裏付けました。

 もう一つは、画像的な特徴が分かったことで、研究の次元が一段上のレベルに移行できたことです。それぞれの銀河の中心にはブラックホールがあると考えられています。画像からブラックホールの性質が解明できてくると、太陽系を含む天の川銀河や宇宙の形成を探る研究が一歩前進する可能性が出てきます。

■ジェットの謎

 幼稚園のとき宇宙の本を見て、宇宙に興味を抱きました。広島大大学院に進学してからは、広島大宇宙科学センターが西条町下三永に設置している1.5mかなた望遠鏡を使って、目に見える可視光でブラックホールの周辺から噴き出す高温ガス「ジェット」の研究を続けてきました。

 可視光ではジェットを確認できましたが、今回の電波の画像では、残念ながらジェットを見ることはかないませんでした。今後の研究で、可視光と電波をつなぎ合わせながら、ジェットの謎に迫りたいと思っています。

■研究の醍醐味だいごみ

 宇宙は人間の想像を超えています。前述したように、人間の予想と一致しても驚きだし、予想とは違う観測データが得られるのも驚きます。その兼ね合いの面白さが研究の醍醐味です。もう一つは宇宙には星の数ほど謎があり、何か一つの天体を詳細に研究すると、分からないことが見えてくることです。地球と一番近い恒星の太陽ですら謎だらけです。

SASADA MAHITO
 岐阜県大垣市出身。広島大理学部卒。同大大学院理学研究科博士課程後期修了。国立天文台水沢VLBT観測所の研究員などを務めた後、2018年1月から現職。今春、国際チームの一員としてブラックホールの撮影に成功した。34歳。


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