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2018/12/6

ジイジ・バアバ、パパ・ママへ贈る

心のめばえ アヤと過ごすジイジの日記 <18>

著者/牟田 泰三
挿絵/橋本 礼子

4歳9カ月 ターザンロープ @

 子供達の遊園地には、ターザンロープが設置されていることがある。ターザンロープというのは遊具の一つである。二カ所の鉄塔の間にケーブルが渡されていて、そのケーブルに取り付けられた滑車にぶら下がったロープにしがみついて滑空するようになっている。ロープの下端には尻当てが付いているものもあり、そこにおしりを乗せて滑空することもできる。

 ターザンロープは子供達の間で大人気である。ある日、憩いの森公園のこども広場で、近所のお兄ちゃんやお姉ちゃん達がターザンロープをやっていた。これを見ていたアヤは釘付けになっている。よほど面白そうに見えたのであろう。

 ターザンロープで遊んでいた子供達も、ひとしきり楽しむともう飽きたのか、散らばって行ってしまった。ターザンロープはケーブルの途中でブランブランと揺れている。アヤはこれに近づくと、おそるおそる触ってみた。先ほどの子供達がやっていたように、手でぶら下がって両足ではさんでみる。軌道の途中だから勿論動くわけがない。そこで、ジイジが出発点の近くまで引っ張っていって手を離すと、ジーッと滑空する。にわかにアヤの目の色が変わってきた。
アヤ 「もっとやって」
と言う。

 何度かやっているうちに、とうとう出発点の台の上から滑空できるようになった。滑車の終点にはクッションバネがあって、ここでビヨーンと跳ね返されるようになっている。跳ね返されてすぐに降りようとすると足を取られるので、
ジイジ「最後までつかまっておくんだよ。止まってから降りようね」
と言うと上手にそれを守っている。

 こうして次から次へと繰り返し、もう30回ぐらい滑空したのであろうか。大人の我々だと、くたびれ果てる頃だろうが、幼児にはそれがどうも分からないらしい。きっともう腕が相当に疲れているはずだ、と思った瞬間、クッションのところで手が離れて、墜落してしまった。慌てて抱き起こしたら、勿論大泣きだ。しかも、あごのあたりにちょっと擦り傷も出来た。

 本人は気が付いていないのだろうが、あまりにやり過ぎて腕も手も相当に疲れていて、多分握力がなくなっていたのであろう。ジイジがもっと早く気が付いて、20回ぐらいでやめさせればよかったのだ。

 家に帰ると、早速ママに報告している。ターザンロープという新型の遊具をマスターしたこと。ちょっと失敗して落ちたこと。次から次へと自慢話はとまらない。

 翌日のアヤの言動は意外なものだった。次週号へ続く。


プロフィル むた・たいぞう

 1937年、福岡県生まれ。九州大学理学部卒業、東京大学大学院物理学専攻修了、理学博士。京都大学助手・助教授、広島大学教授・学長、福山大学学長などを歴任。主な著書に「語り継ぎたい湯川秀樹のことば」(丸善出版)、「電磁力学」(岩波書店)、「量子力学」(裳華房)などがある。東広島市在住。

連載中の「心のめばえ」シリーズは、牟田のホームページでも読むことができます。https://home.hiroshima-u.ac.jp/mutata/


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