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2017/12/14

竹原市長選〈12月24日投開票〉

長期ビジョンで訴えを


▲「たけはら合同ビル」への移転が検討されている竹原市庁舎

 任期満了に伴う竹原市長選は12月17日告示、同24日に投開票される。現在のところ、現職の吉田基氏(67)、司法書士の新人井上盛文氏(48)、元市総務部長の新人今栄敏彦氏(57)の3人が立候補を表明している。市長選を前に本紙編集委員の吉田実篤氏と政治評論家の伊藤正義氏が、竹原市の実情や、市長選のポイントなどについて語り合った。

吉田 市長選に触れる前に、他の都市と比較した竹原市の現状について話したい。窃盗などの刑法犯の認知件数は1年間に127件と、東広島市と比べると5分の1以下で、犯罪のない都市だ。保育施設が多く、待機児童がゼロなのも竹原市の誇れるところだろう。

 一方で、製造品出荷額は10年前とほとんど変わらず、呉市や東広島市の10分の1でしかない。企業進出や新規出店の店もほとんどない。心配なのは市議の数だ。人口1万人当たりの市議数は東広島が1・6人なのに対し、竹原市は5・3人と突出して多い。

 それらを踏まえ本題に入りたい。3人は市役所の早期移転や雇用の創出、教育環境の充実、観光振興などを訴えている。

伊藤 (現職にとっては)変な言い方だがウソのつけない選挙。人口3万人規模では、市民は、ある意味、首長の『顔』が分かる。当然、現職は誇張ができないし、4年間の仕事ぶりがそのまま評価される。

吉田 元市総務部長が立候補を予定している理由は。

伊藤 総務は、役所内で一番の要のポジション。いわば市の内部事情を知り尽くしており、市職員の現職に対する不満を背負っての出馬だろう。もう一人、司法書士も立候補を予定して いるが、彼には民間の感覚で切り込んでいってもらいたい。

吉田 冒頭で指摘したように数字は混とんとしている。竹原市に未来はあるのか。

伊藤 地方自治体の選挙は4年に一度。首長はどうしても、目の前の結果が出る事業に着手する傾向になる。ただ、それは許されない時代に突入している。多くの自治体が人口の減少で滅びる可能性があるといわれている中、自治体が存続するかどうかは、子どもを生むことができる年齢の女性人口を増やすかどうかで決まるからだ。そのことを見据えた10年単位での施策を展開していかないと、竹原市の10年先、20年先の未来は分からない。有権者はそこを見極めてほしい。

吉田 ただ、現職市議の議会答弁からは、危機感はあまり感じられない。歴史のある良い街だから、投資を抑え、上手に予算をやりくりすればいい、などと現状を肯定する現職市議が多いのも事実だ。市政の課題を、政争の具に利用している話も聞こえてくる。

伊藤 なぜそんな声が出るのか。地方自治体は破産しないからだ。北海道の夕張市は、深刻な財政難のあおりを受け、2007年に財政再建団体に指定されたが、国や北海道の監視下で、自治体運営を続けている。市長にもきちんと給与が支払われている。経営体でみたときには、どんなことになっても倒産しないとなると、好き勝手なことをすることになる。

吉田 由々しき問題。竹原市の未来を考えると合併は必至だと思うが、竹原市にとっては、どこと合併するのが最良だろう。

伊藤 江戸時代、大崎上島が北前船の寄港地となったことで、竹原市が塩づくりを始め、双方が共に繁盛してきた。竹原市は、海を隔てた大崎上島町と一体であった、その歴史的背景を忘れてはならない。大崎上島には、19年、中高一貫校のグローバルリーダー校が開校するが、そのことは竹原市にも多大な影響を及ぼすことになる。立候補者は、今回の市長選で、周辺の自治体にも目を向け、広域に長期のビジョンを訴えてほしい。

データで見る竹原市

本紙12月14日号の「竹原市長選」の記事で、市議会議員の定数を「竹原市が30人、東広島市を14人」と掲載しましたが、正しくは「竹原市が14人、東広島市が30人」です。お詫びして、訂正いたします。


記者の目
地場産業育成と観光に着目し活路を

 2005年前後にあった平成の大合併で、単独市制を選択した竹原市。あれから10年余り。合併で中核都市への移行を目指す東広島市と対照的なのが竹原市の「元気のない衰退」だ。

 衰退の象徴が人口の減少だ。人口は年に500人ペースで減り続ける。人口減少に歯止めをかけるためには、市外に流出する若者の還流(U・I・Jターン)を促すことだ。市内の事業所は、この13年間で26・7%も減少している。第2次産業ベースでみても、東京に本社のある大企業と関連会社だけで成り立ち、昔ながらの商工事業者の疲弊は続いている。地場産業を浮揚させることが、竹原の経済成長率と市民所得の向上につながり、若者が希望の持てる地域として、竹原に目を向けるきっかけになるだろう。

 街が衰退しているもう一つの要因は、市の中心部で公共施設の再整備が進んでいないことだ。懸案だった市役所の移転問題は、約3年の協議を経て、今年8月に、市役所がたけはら合同ビルに入り、同ビルに入居中の竹原商議所は、市が新施設を建てて一部を商議所に貸す案で基本合意。ただ、新施設の明確な財源見通しは立っておらず、契約時期も未定。市役所の移転計画の停滞に呼応するように、老朽化が目立つ図書館や市民館の建設計画もめどが立っていない。

 中心部ににぎわいを取り戻すため、次のリーダーには機動力が求められることは間違いない。

 一方で、現状の竹原市に救いがあるとすれば、東広島市民もうらやむ観光資源だ。国の重伝建である町並み保存地区は、NHK連続テレビ小説「マッサン」の舞台となり一気に知名度を高めた。「ウサギの島」で知られる大久野島は外国人観光客が急増している。海を隔てた大崎上島は、映画関係者が注目する。市民の熱意で観光資源を掘り起こし、上手く活用すれば、観光は竹原を支える源になるはずだ。

 竹原の失われた10年をいかに取り戻すのか。次の為政者には、目先の利益に左右されない、問題意識をしっかり持ったリーダーであってほしい。

(日川)


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