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2017/11/23

知っておきたい相続のポイント

 「終活」という言葉がよく聞かれるようになったが、自分には関係ない話だと聞き流してしまう人も多い。身近に起こった事案を読みながら相続のポイントを学びませんか。【記事抜粋/相続・遺言のポイント50】

相続放棄しても生命保険を受け取れますか?

相談者 43歳(男性)のケース

生命保険は、受取人の固有の権利

Q.私の父は、父の友達からの5000万円くらい借金を残して死亡しました。そういうことで、相続放棄の手続きをして借金の相続から逃れようと思っていたところ、私を受取人とする生命保険3000万円があることが判明しました。私が相続放棄の手続きをすると、この生命保険も受け取ることができないのでしょうか。

A.あなたもご承知のように、相続放棄とは、被相続人(死亡した人)の相続財産のすべて、すなわちプラス財産も、マイナス財産も放棄することです。あなたは、その生命保険金が相続財産のうちのプラス財産に該当するのではないかと疑問に思っているのですね。

Q.はい。

A.結論から言いますと、あなたが父親の借金を理由に相続放棄の手続きをしても、あなたは父親が契約している生命保険金を受け取ることができます。
 なぜなら、生命保険金は、死亡した人が生前に契約して保険料を払っているものではありますが、それは遺族の生活を保障し、あるいは精神的に慰謝をなすものといえ、相続遺産ではなく、受け取り人の固有の権利だからです。

Q.父にお金を貸していた父の友人は、私に対して「3000万円も保険金が入るのだから自分が貸したお金の半分くらいはそこから返してくれ。それが人の道ではないか」と言って、借金の返済を私に強く要求しています。私は、いったいどうすればよいのでしょうか。

A.先ほども申し上げましたように、生命保険はあなたの権利であり、財産です。ですから、あなたが、借金について相続放棄の手続きをしていれば、父親の友人に対して生命保険から借金返済を行う法的義務はありません。あとは、父の友人に対し、借金をいくらかでも返すかどうかは、あなたの自由な判断ということになります。

相続放棄しても死亡退職金や遺族給付金も受け取れる

Q.それでは、父の死亡退職金や遺族給付金は受け取ることができるのでしょうか。

A.これらも、生命保険と同様に生存者のためのものと考えられ、相続財産には入りません。ですから、あなたが父親の借金について相続放棄をしても、死亡退職金や遺族給付金を受け取ることはできます。


夫の死亡後に、夫の内緒の借金が分かったのですが…

相談者 62歳(女性)のケース

相続は資産も負債も引き継ぐ

Q.私の夫が交通事故で死亡し、その後1カ月ほどで数社の金融機関に合計700万円の借金があることが判明しました。これまで請求書は勤務先に送られていたようで、まったく知りませんでした。どうしたらよいのでしょうか。

A.ご主人の残された資産はあるのですか。

Q.100万円くらいの絵画がある程度です。

A.そうであれば、相続放棄の手続きをするのが良いと思います。というのは、ご主人の死亡により、相続が開始しますが、何も手続きをしませんと、相続人は、被相続人(死亡した人)の資産も負債もすべて引き継ぐことになります。この件の場合は、ご主人の財産は、約600万円の債務超過ですから、相続人は、これを支払わなくてはならなくなります。

家庭裁判所から相続放棄申述書をもらう

Q.相続放棄の手続きは?

A.家庭裁判所から「相続放棄申述書(しんじゅつしょ)」という用紙をもらい、これに必要事項を明記し、戸籍謄本等を添付して提出します。一人につき、収入印紙600円が必要ですが、弁護士に依頼するときは、その費用もかかります。

Q.注意することはありますか?

A.一つは、相続放棄が可能なのは「相続開始があったことを知った時から3カ月以内」ですから、その期間中に手続きをする必要があります。この期間を過ぎてから借金などが判明したときは、判例では、その判明時点を起算点とする解釈がされています。
 もう一つは、資産である約100万円の絵画を売り払わないことです。というのは、そのような「処分」をしますと、相続を承知したとみなされ、負債についても責任を負わなければならなくなります。もっとも、軽微な慣習上の形見分けや葬式費用の支出、生命保険の受領などは「処分」には当たらないとされていますので、ご安心ください。


「相続・遺言のポイント50」

 山下江法律事務所の弁護士山下江氏が編集し、2016年に発行した「相続・遺言のポイント50」。相続のプロフェッショナル達の経験を踏まえた相談本タイプの中で、一番わかりやすいものを目指して作成した。本体価格1400円(税別)。


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