教育現場リポート
ただ今 午後2時5分 児童がうつぶせ なぜ?

 小学校の教室で、児童が机にうつぶせになっているこの風景。一クラスだけではなく、全校児童が同じ時間に7分間、同じ体勢になる。小学生の親世代では、学校では決してすることのなかった「ある」時間を、今年度から導入した小学校が東広島市にある。その現場を取材した。(橋本礼子)

毎日、7分間 静まり返る校内

 この時間を導入したのは、東広島市高屋町小谷の市立小谷小学校(岡田良二校長、269人)。昼休憩、ドリルなどをするチャレンジタイム、掃除が終わった後の午後2時5分。児童らは自分の教室に戻り、カーテンを閉め、照明を消し、席に着く。ゆったりとしたクラシック音楽が放送され始めると、全員、机にうつぶせる。

 先ほどまでの校内は、元気に遊んだり掃除をしたりしていた子どもたちで「動」にあふれていたが、一変、校内は静まり返って、音楽だけが聞こえる。

 7分後、「すっきりタイムを終わります」という放送で、子どもたちはむくりと起き、「大きく背伸びをしましょう」というアナウンスで、「ん〜」と伸びをする。

 そして、5時間目の授業に入る。

これを始めて この変化…

変化@ 5時間目にあくびが出なくなった。(児童)
変化A 午後の授業に集中できるようになった。(児童)
変化B 午後の授業で、背筋が伸びるようになった。(児童)
変化C 午後の授業で、発表の声が大きくなった。(教員)
変化D 学校から帰ってすぐに寝てしまうことがなくなった。(保護者)
変化E 児童の保健室の利用数が減った。(小谷小前年比)


集中力アップし保健室利用が減少

昼寝の時間 わずかな眠りでさまざまな変化


7分間の眠りの後、背伸びをする児童

 小谷小学校が導入したのは昼寝の時間「すっきりタイム」。健康教育の一環で、午後の授業の集中力を向上させることが目的。

 昼寝を導入した高校で大学進学率が上がったという取り組み事例を知った岡田校長が提案。毎日行っている。

 熟睡ではなく、「うとうと」するくらいの時間がいいと7分間に設定。必ず眠らないといけないということではなく、目を閉じているだけでもいい。

 始めて5カ月。効果を実感している児童は多い。古川万葉さん(11)は「5時間目にあくびが出なくなり、授業に集中できるようになった」、山下涼華さん(11)は「頭がすっきりする。もっと寝たいと思う時でも、背伸びをしたら眠気が覚める」という。

 全校児童を対象に6月に行ったアンケートでは、5時間目の授業が「いつも眠たくなる」 「時々眠たくなる」と答えた児童が、4月に比べて10・1ポイント減った。「午後の眠気がないと、授業への向き合い方が違う。学力向上につながると期待している」と岡田校長。

うとうと3分で脳の疲労が回復

保健室利用の回数(小谷小)
 「気分が悪い」「頭が痛い」「けがをした」などでの利用があったが、すっきりタイムを始めて、4月、5月ともに前年に比べ利用回数が減った。

 睡眠科学が専門の田中秀樹広島国際大学教授によると、浅い睡眠が3分間続くと脳の疲れが回復することが、研究によって明らかになっているという。高校や中学校で昼寝を導入したケースでも、「やる気が出た」「集中力が高まった」などの良い効果が報告されている。

 子どもの睡眠不足や夜型化が問題視されている中、「小学校での昼寝の取り組みは、社会的にも注目されている。昼寝を通して睡眠の大切さを理解し、生活リズムを見直すきっかけにしてほしい」と田中教授。

 小谷小は市の健康教育推進校の指定校で、9月25日には、研究発表会を開き、すっきりタイムの様子を他校の教員らに公開する。岡田校長は「体調不良を訴えたり、けがをしたりする児童が減り、保健室の利用回数は前年同時期に比べて減少した。健康面での効果も出ている。検証をしながら、他校にも広めていきたい」と話している。

 また、大人も昼寝をすると午後からの仕事の効率が上がるということから、仮眠を導入する企業もある。「適度な昼寝は、睡眠障害やうつ病の予防にも役立つ」と田中教授。小谷小では教職員も一緒に昼寝しており、6年生担任の中島基教諭(27)は「昼にかけて高まった気分がクールダウンできる。『今日は少し疲れているな』など、自分の体を知ることができる」と言う。

 一昔前は、「サボり」などのイメージもあった昼寝だが、一石二鳥、三鳥にもなるということで注目されている。今後、さらに広がりそうだ。

ザ・ウィークリー・プレスネット 2015/9/26

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