水道料金 なぜ高い? 高いのには理由がある

 「水道料金が高い」―。市民からよく聞く言葉だ。水道は市民生活に直結した最も基礎的な公共料金だけに、大きな負担を感じている市民は少なくない。なぜ、水道料金は高いのか。水道料金を是正する抜本的な解決策はあるのか。東広島市の水道事情を取材した。(日川)

 別表は、上水道事業を行う県内自治体の家庭用水道料金(10立方mで計算)のことし4月現在の月額料金だ。東広島市は、県内で5番目に高く、最低料金の大竹市に比べると実に2・5倍の高さだ。

乏しい自己水源


▲東広島市内を流れる黒瀬川

 その背景にあるのは、地形的な条件からくる自己水源の乏しさだ。 市を流れる主要河川は、水量が乏しい黒瀬川だけで、水道事業が始まった昭和30年から、水源は黒瀬川水系か地下水に求めるしかなかった。このため、井戸水を持たない家庭では、毎年のように断水が発生。特に水の需要が増す夏場の夜間断水は、日常茶飯事だった。

 昭和48年に広島大の統合移転が正式に決まると、水の問題は喫緊の課題となった。57年に県から水道用水を購入できるようになったことで、以後、水道水の安定供給が図れるようになり、市が発展する大きな契機となった。上水の普及率も飛躍的に伸びていった。

 市水道局の話では、現在、水道水の9割を県用水に依存、1割を吾妻子浄水場など6カ所から取水する自己水源で賄っている。1立方m当たりの給水単価は、自己水源で供給した場合の88円に対し、県用水は2倍近い134円に膨らむ。県用水のコストが割高になるのは、送水管など巨額の設備投資を回収するための費用が含まれるためだ。

県用水依存が高い要因

 水道事業は、地方公営企業として法律で定められ、独立採算で運営される。このため、必要経費は全て市民が支払う水道料金で賄われている。その市の水道料金は、県用水の購入代金に、浄水施設・水道管の減価償却費や人件費などを加算して算出されている。このうち、県用水購入費の占める割合は約50%。つまり、県用水に依存していることが、高い水道料金になって跳ね返っているのだ。

 となると、自己水源の比率を高めることが、水道料金を下げることにつながりそうだが、前述したように、市には大きな川がなく、物理的に安価な自己水源の水量を大幅に高めるのは不可能だ。唯一考えられるのは、東広島市にありながら、戦前から呉市の行政財産で、豊富な貯水量を持つ三永水源地の水を自己水源として利用する案だ。

 同水源地については呉市の上水として利用されてきたが、平成15年に呉市と県の間で代替契約が結ばれ、現在は、呉が県用水の供給を受ける代わりに、水源地の水は、県が東広島にある県営工業団地への工業用水として活用している。こうしたことから、呉市上下水道局は「水源地は県との代替資源として呉市に必要な施設。保持することしか考えていない」と冷めた見方だ。

施設更新に積立が必要 黒字続くも料金値下げは困難

 では、企業努力で水道料金を下げることはできないのか。市の水道事業の収支は、水道料金の値上げに踏み切った平成21年以降、経営努力で黒字決算が続いている。しかし、市水道局によると、その黒字分を、料金値下げに反映させることはできない、と言う。

 現在、市の上水普及率は約85%。拡張事業はピークを過ぎたが、県用水の受水に伴い、昭和50年代に整備した施設や水道管の大半が、10年後に耐用年数を超え、「施設・管路の更新には膨大な自主財源が必要になる。将来につけを残さないためには、剰余金の積立が必要」(市水道局)だからだ。

 東広島市の水道料金が高いのは確かだが、その代わりに、常に安全で安定した水が家庭に届けられるようになったことも忘れてはならない。「蛇口をひねれば水が出る」。今でこそ当た り前だが、昭和50年代までの東広島では当たり前ではなかったのだ。安易に水道料金を下げると、老朽化した施設の更新がままならなくなることも理解しておきたい。自己水源が乏しい以上、一自治体の取り組みには限界があるのだ。

 効率的な水道事業の実現には、事業の広域化や民間運営も視野に入れる時代になった、と言っていいだろう。


VOICE-市民の声- 東広島市の水道料金 どう思う?

市制施行前から水道事業に携わってきた市職員OB

 県から水道水を購入する前は、夏場は昼夜とも時間断水が当たり前だった。市民はポリバケツに水をためるなどして、夏場をしのいでいた。一度断水をすると、断水を解除したときに、水圧で管のさびが水と一緒に蛇口から流れるため、市民からは「市は赤水を飲ませるのか」と苦情が寄せられたものだ。水道料金が高いという側面だけを捉えて、行政を批判するのはどうかと思う。

4年前に他市から引っ越してきた主婦

 水道料金が高いのは仕方がないと思う。ただ、県用水に頼っているということは、緊急時や災害時に十分な水量が確保できるのか心配になる。

2年前に他県から引っ越してきた主婦

 自治体間で、水道料金に多少の違いがあるとは思っていたが、ここまで差があるとは思わなかった。高くなる理由があるのは分かるが家計を圧迫することに変わりはないので、正直しんどい。

1年前に他県から引っ越してきた主婦

 理由は知らないが、確かに高い。ただ、今まで住んだことがあるどの地方よりも水がおいしいと思う。365日毎日この水が安定して飲めると考えると、少々高いことは我慢しないといけないのでは。

黒瀬町在住の主婦

 重要なライフラインだからしっかり維持する必要があると思う。目先の値下げにこだわって、将来維持できないのであれば意味がない。でも、実際は目先の値下げがうれしいのも主婦の本音。

高屋町在住の男性

 東広島の水の台所事情は、農業用水に使うため池が多いことからも理解できる。酒どころとして、良質な地下水が取水できることを考えると、市内に大きな川がないことは残念だ。でも、こればかりは行政の力ではどうにもならないこと。私はよく海外に行くが、蛇口から安全でおいしい水が出てくるのは、日本くらい。水道料金が高いと論じる前に、そのことに感謝する気持ちを持たないといけないのではないか。


【比較】施設更新費用の捻出 自治体に共通する悩み

 県内自治体で最も水道料金が安い大竹市。戦前、旧海軍省が整備した上水施設を無償で引き継いだため、投資費用が少なくて済んだのと、給水量の8割を、豊富な水量を誇る小瀬川の伏流水から取水しているのが安価になっている理由だ。2番目に安い海田町も、給水量の9割を自己水源である瀬野川水系で賄う。住宅密集地域が多く、給水効率が良いこともコストを削減できる要因という。

 一方、県内で2番目に高い熊野町は、自己水源がなく、 100%県用水に依存。井戸水を使用する家庭も多いことから、一人当たりの水道使用量が少なく、上水施設の維持管理費が割高になって水道料金に跳ね返っている、という。

 ただ、今後、各自治体に共通する悩みとなるのが、人口減少に伴う水道使用量の減少と、老朽化が進む施設の更新費用の捻出だ。黒字運営を続けてきた大竹市でさえ、「水道事業を取り巻く環境の厳しさを考えると、黒字経営が続くかどうかは不透明」(市上下水道局)としている。

ザ・ウィークリー・プレスネット 2015/7/18

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